第36章 姫の年越しシリーズ(2024年)・12月31日
ここにいる慎ましい下女達が政宗の前で『ふ…っおぉ~~』という奇声を発するわけがないし、目に入れても痛くないのは孫を表現する時の言葉ではないのか。
遊び半分で大福に絵を描いたのを単に珍しがられただけで、そこに『異性として舞が好き』という人間は居ないだろうというのが舞の見解だ。
「皆さんが期待するようなお話はありませんよ。
仲良くしてもらっているから同じ土俵に居るように見えるのかもしれませんが雲泥の差があります」
舞の視界に堂々たる安土城が映り、それを眺めながら『あの方達を鯛の姿焼きに例えると私は彩りに添えられる南天の葉です』とまで言う。
ザルの目から白菜の切れ端がスポンと抜けて、舞はスッキリした顔で水洗いに移っている。
男達の好意に全く自覚がないというか、興味もないといった様子に女達は意外そうにしている。
洗い物に専念する舞に聞こえぬよう、女達は声をひそめた。
女1「信長様にあんなに可愛がられているのに全く気付いておられないのね」
女2「秀吉様と政宗様だって、あんなに好意を向けていらっしゃるのに…」
女3「三成様だって、舞様の失敗を優しく許されたと聞いたわよ」
家康様も咄嗟の時は舞様をかばわれるとか」
女4「私はこの間、舞様と蘭丸様が二人きりで城下にいらっしゃるのを見ましたよ」
女5「え!?私は舞様と慶次様が逢瀬しているのを見たのよ?」
女達の視線がザルをごしごし擦っている舞に集中した。
女達「「「「「「舞様は罪なお方だわ……」」」」」