第27章 残穢
「悟…今日は早く帰って来るって言ってたけど、急な仕事が入ったのかな」
作って置いた夜ご飯をラップし冷蔵庫へとしまう。
どうやら今日は会え無さそうだ…
リビングの電気を消し寝室へ向かうと、一人で眠るには大きすぎるベッドへと潜り込み布団を首元までかける。
悟に急な仕事が入るのはいつものことだ。早く帰ると言っていても、全然帰ってこないどころか連絡が取れない事も度々ある。休みだった予定が休みじゃなくなるなんて事もしょっちゅうだ。
時刻は0時を過ぎ明日も仕事だというのに眠たくならない…
私はスマホを開くと適当にいじり始めた。眠くなるまで動画でも見ていよう…
そんな事を思いながらスイスイとスクロールをしていると、ガチャッと扉が開く音がし玄関の方からガタガタと物音が聞こえてくる。
「帰って来たのかな」
スマホを閉じゆっくりとベッドから起き上がると、悟とお揃いで買った白くまのスリッパを履いてリビングへと足を進める。
だけどリビングに電気は付いていなくて…
「…悟?」
小さく声をかけ中へと入れば、ソファーがギジリと軋む音が耳へと届いた。
暗がりに慣れていなかった目が次第に慣れたいき、暗闇の中でもソファーからはみ出る白髪頭が薄らと見えた。
私はソファーへ近づくと、そこに座っている悟の前で足を止める。
「ごめんね、起こしちゃったかな」
ソファーへ深くもたれていた身体を起こした悟が、私へとニコリと笑う。
その声はいつもと同じトーンなはずなのに…いつもと同じ笑顔なはずなのに…
「…悟…何かあった…?」
私にはいつもと違って見える。