第22章 揉め事
“もしもし〜?さとるぅー?”
電話の向こうでは、明らかにぽやぽやとした声で話すリンの声が聞こえてくる。
「リン、今どこ?もしかして飲んでるの?」
そう電話越しに少しだけ低い声を出すと「今駅前のすみれって居酒屋だよ〜すこーしだけ飲んでる〜」と呑気な声が聞こえてきて「はぁ…」と大きなため息を吐き出した。
やっぱり飲んでる。
硝子と飯って時点で確認するべきだった。
しかも明らかに酔っ払ってるし。
クソ、変な男にナンパでもされたらどうするんだよ。
「僕今から迎えに行くから、そこから動くなよ。分かった?硝子にもそう伝えて」
“えー?悟も今から来るのぉ?じゃあ待ってる〜”
「すぐ行くからそれ以上呑むなよ!絶対だからね!」
“はぁ〜い!”
僕は再びデカいため息を落とし電話を切ると「伊地知、悪い。駅前に向かって」とスマホを眺めながら行き先を変更した。
たく、硝子の奴。リンが酔っ払ったら僕が怒るかもしれないって分かっててやってんな。
つーかそう言えばアイツ、今「悟も」って言ったよな?まさか他にも誰か居るんじゃないよな。もし他の奴にあんな酔っ払った姿見せてたとしたら…
あぁ、イライラする。もう一層のこと何処かに閉じ込めておこうか。
そんなヤバイ考えが生まれてしまうほど、本当は僕はリンを他の誰にも見せたくないんだ。