第12章 二人の背中
「傑ッ!待って!!」
悟と電話をしている硝子から離れていく傑を、走って追いかける。
私はそんな傑の腕をパシッと掴むと、傑はゆっくりとこちらへと振り返った。
「リン、泣かないでくれ」
傑の背中を追いかけながら、いつの間にか溢れ出ていた涙を…傑が優しく親指で掬い取ってくれる。
「…傑、ごめんね…傑が何かに悩んでいるの分かってたのに…それなのに私…」
また、いつもの四人に戻りたい。
いつもくだらない事で笑い合いながら、毎日を過ごしていたあの頃に…
「リンは優しいね」
ニコリと笑うその表情は、いつもの傑そのままで…
今起きている出来事が、やっぱり夢なんじゃないかと思ってしまう。
「傑…行かないで…」
その私の小さな言葉に、傑は少しばかり瞳を揺らすと…すぐにその目を細め。私を優しくぎゅっと抱きしめ。
「悟を頼んだよ…リン」
それはとても優しい声だった。
いつも私達を安心させてくれる
いつもの優しい
傑の声だった……
人混みに紛れていく傑の背中を追いかけるようにして叫ぶ。
「待って傑!行かないでッ…傑っ…!!」
ヒックヒックとこれでもかと言うほど涙を流しながらも、どんどん離れて行く傑の背中を追いかける。
だけど人混みはそう簡単に私を前には進ませてくれなくて。
「お前はここにいろ」
その低い声と同時に肩を掴まれ、パッと後ろを振り向けば、そこには真っ直ぐに傑を見つめる悟が立っていた。