第10章 雪の夜
「あー…、私も皆んなと一緒かなぁ」
ニコリと笑うと、硝子がくれた飴を口に含み笑顔を向けた。
正直言って、本当は私に帰る実家などない。
私の家系は非術師の家系で、産まれた時から呪いの見える私を両親は不審がっていた。それは歳を重ねるごとに両親を苦しめ…あそこに怖いお化けがいるだの、妖怪がいるだの言う私を二人は頭のおかしい子を見るかのようにして接した。
そんな日々が続く中、ついに私は両親へ見放されたんだ。そんな時私を引き取ってくれたのは母方の祖母だった。
祖母は呪いが見えるわけでも無かったにも関わらず、私の言葉を信じ、私を大切にしてくれた。沢山の愛で私を包んでくれた。
小学校低学年から祖母と二人暮らしを始め、私は祖母に育てられここまで生きてきた。
そんな祖母も、私が高専に入学する三ヶ月前に病気で息を引き取り。私は一人になってしまったのだ。両親とは捨てられたあの日以降、一度も会っていない。
今となっては七海君に硝子や悟に傑がいてくれる。私は一人じゃないと思ってる。だけどそんな私に実家がないのは変え難い事実で。私の唯一の秘密だった。七海君にすらまだ話せていない。
それは特段話す必要がないと思っていた事もある。だって今は高専が私の居場所で、皆んなが私の側にいるその事実が嬉しかったから。
それに普段は皆んなそれぞれ実家の話や家族の話をする事が無いからすっかり言い忘れていた…ていうのもある。
だけどせっかく連休に皆んなは実家に帰ると言っているんだ。
そこで私が帰る家がないなんて言ったら…きっと皆んなは優しいから高専の寮に残ってくれようとするに決まってる。
だから今は言わないでおこう…きっとバレる事だってそう無いだろうし。