第19章 不器用な優しさ 瀬見英太
「こっち…」
「え?」
手を引っ張られてそのまま英太の腕の中に収まる。柔らかなTシャツの生地が頬に触れる。
「英太…?」
「ほんとごめんな…」
切なそうに漏らす言葉、抱きしめた腕に力が籠る。私の事ちゃんと考えてくれてたんだって、それが嬉しくて…。
「よかった、嫌われてなくて…」
「なんでそうなるんだよ」
「え?」
「むしろこっちが…。あんな無神経なことして。仮にも年下なのに優しくしてやれないとか最低だろ」
「そんなことないよ」
「すぐに謝りにいけば良かったのにな。あのまま気まずいままだと練習にならないような気がして」
「だから来てくれたんだ」
「それもあるし、単純に会いたかった」
「…嬉しい」
英太の背中に手を回してぎゅっと抱きしめる。心の底からホッとした瞬間だった。
「あー…、お腹すいた」
「部屋戻ったらちゃんと食っとけよ。野菜ジュースも」
「あれも私のなの?」
「当たり前だろ?明日からもハードだからな」
「うん。ちゃんと食べてまた明日から頑張るから」
「あともう一個」
「何?」
顔を上げた時、丁度唇が重なった。