第17章 ❤︎ ぼくなつ 木兎光太郎
「んじゃそろそろ潮も満潮だし日も昇ってきたから帰ろうぜ」
「そうだね。日陰でも暑くなってきちゃった…」
「しっかり部屋で休めよ?バテたら島の生活楽しめねぇぞー」
「そうする。光太郎さんはどうするの?」
「買い出し」
「京治さんのところ?」
「いや、今日は街の方。業務用の洗剤とかそういうの買ってこいって頼まれてるから。今はもう店も開く頃だし」
「今は…11時過ぎか」
「こっちは開く時間も遅いし閉まる時間も早いって島独自の時間軸で動いてるから。…んじゃあ、帰るか」
「うん。荷物、私も持つからね」
「さんきゅ」
すっかり日の昇った空は夏空を取り戻して蝉の合唱の中来た道を戻っていく。じんわりと背中を流れ落れていく汗と目の前に広がる真っ青な青い海と水平線はきっと忘れる事にできない光景になっていくだろう。
そして光太郎さんの大きな背中も…きっと。
それから昼食のお素麺を食べてシャワーを浴びて、しばらくはクーラーの効いた部屋で横になっていた。楽しかったなとさっきまでの出来事を思い出せば光太郎さんに抱き締められたあの瞬間が蘇る。
あの場面だけスローモーションで、思わず紅くなっていく頬。あんなのただのハプニングなのになんでこんなに意識しちゃってんだろう。タオルケットを頭まで被ってぎゅっと目を閉じた。