第72章 結婚するまで帰れません(１)　岩泉一

≫一side


及「いちかちゃんってあんな一面もあるんだね」
花「関西弁、めっちゃ可愛いやん」
及「ちょっと花巻まで関西弁うつってるよ」
松「仲良さそうな感じだな」
花「そりゃいちかちゃんに会うためにこっちまで来てるくらいなんだから当然でしょ？なぁ、岩」
岩「あ？……まぁ、そうだな」

とりあえず仙台城には来たものの、銅像の前には誰もおらず暑さに負け適当に入った土産屋の飲食スペースで速攻見つけてしまった。いきなり声をかけるのも…ってことで死角になる位置から四人を眺めていた。

しかも変装だと言って買わされた土産屋のTシャツまで着せられている。背中に“伊達男”と書かれた揃いのTシャツの男四人組なんか怪しすぎる。

岩「もういいだろ？」
及「全然良くないよ。途中からしか聞けてないけどいちかちゃんの好きな人って誰だろう。…案外俺だったりしないのかな」
花「しないよ」
及「なんで分かんのさ！？」
花「そりゃ…、なんとなくだけど」
及「俺さ、結構本気で好きなんだよね。もし俺じゃない人を好きでも諦めたくないんだよね」
松「気持ちは分かるけど、あんましつこいと嫌われるよ？」
及「ぜひそれは避けたいね」
松「じゃあちょっとは考えて行動しろよ」
及「うん。今も葛藤してる。このまま格好良く登場していちかちゃん拐っちゃおうかとかさ」
岩「やめとけ」
花「あ、待って。荷物まとめてる。そろそろ店出るんじゃない？」
及「追いかけよう」
岩「もういいだろ？地元に帰るわけでもないんだしよ」
及「でもさ、俺たちが心配した通りだったじゃん？あの三人、いちかちゃん連れ戻そうとしてたじゃん」
岩「けど帰らねぇっつってただろ？」
及「そんなんじゃ甘いよ。次は泊まり来るんでしょ？女の子の部屋に男三人なんて有り得ない」