第1章 その出会いは最悪
この人も、他の男と変わらない。
女を穴としか見てないんだ。
まぁ、ヤクザの若頭ともなれば、遊んでるだろうし、これだけいい男なら、女なんて向こうから寄ってくるだろうから、仕方ないといえば仕方ない。
腰に手を添えて、壁に追い詰められる。
ゆっくり顔が近づく。目をギュッと瞑って、唇が触れるのを待つ。
「んな口に力入れんな、キス出来ねぇだろうが、お前も下手くそかよ……」
指で顎を支えて、親指で下唇をなぞる。
そのままゆっくり唇が触れた。
すぐ離れて、また触れる。
何か、不思議な感じがして、体がムズムズする。
「おら、口開けて、舌出せ」
言われるがまま口を少しだけ開けて、おずおずと舌を出すと、そのまま舌を吸われ、絡め取られる。
「ぅ、ンんっ! んっ、ふっ、んっ……」
「はぁ……気持ちいか? あ? っ、ん」
何か、凄い。これは、上手いと言っていいんだろうか。よく分からないけど、気持ちいいのかもしれない。
口内で彼の舌が暴れ回り、段々深くなるキスに、足がガクガクしてきて、立っていられなくなる。
「っと……おいおい、こんなんでこの先持つのかよ……頼むぜ」
足に力がなくなり、座り込みかけた私を支え、面倒そうに言っている割に、顔は楽しそうだ。
「ま、そんだけいい顔出来んなら、期待は出来るか」
こうして、私は彼に体を差し出す事で、生き延びる事となったのだった。