第23章 呪いの言葉、つるぺったん✳︎煉獄さん※裏表現有り
あれは2週間前の出来事。
懇意にしている八百屋の女将さんに、”今年は凄く質の良いさつまいもが出来上がったよ。収穫を手伝ってくれたら、おまけをたくさんつけてあげるから手を貸してくれない?”なんてことを言われ、私は二つ返事でその提案に乗った。
汗をかこうが土まみれになろうが虫が出てこようが、愛してやまない恋人が”うまいっ!”と言いながら私の作った食事をモリモリ食べてくれる姿を想像すれば、そんなものどうってことなかった。
八百屋さんにお借りした竹籠を背負い、さつまいもを詰められるだけ詰め、欲張ったその量はとても重くはあったが、それすらも気にならない。
無事蝶屋敷にたどり着き、門をくぐり自分の持ち場である台所まで向かおうとしたその時
「なぁにあれ?」
「きったない恰好」
クスクスとまるで誰かを馬鹿にするような口調で言われた言葉が私の耳に届いた。
考えるまでもなくわかる。
…私の事か。
女子の憧れの的、杏寿郎さんとお付き合いさせてもらうようになってから、数えきれない程こんな事をされてきた。それも口だけじゃなく、足をひっかけられるだとか、買い物の邪魔をされるだとかそんな事も。
そんな事をされて、落ち込まないわけではなかったが、それ以上に杏寿郎さんの、熱く、それこそ炎のように燃える愛が私の心を強くしてくれた。杏寿郎さんと恋仲でいられれば、それ位我慢しようとそう思えた。けれどもそんなあからさまな行為を、屋敷の主人であり、ご飯を作ることと、雑用しかできない私のことも”蝶屋敷の家族の一員です”と大切にしてくれるしのぶ様が見逃すはずもなく、真っ黒な笑顔で牽制をしてくれたので”口撃”以外の”攻撃”はなくなった。
その”口撃”がさっきのそれだ。
「あんな小汚い格好でよく外を歩き回れるわよねぇ」
「本当ぉ!色気の欠片も感じない」
「あんな子の何が良いのかしらね?」
「どうせ自分から抱いてくださいとでも言って迫ったんでしょう?炎柱様はお優しい方だから、きっと断れなかったのよ」
私の心を傷つけるためだけに紡がれたその言葉たちが、私達以外のいない、静かな蝶屋敷の庭に響いている。