第5章 * 光の中のプロポーズ
「わーっきゃーっきゃーーー!!」
結を背中におぶって夜の街を駆ける。
結は怖いらしく、ぎゅうっとオレにしがみついている。
「結、怖かったら目、閉じてなよ。
口も閉じないと舌噛むよ」
森に入り、一度木の上に結をゆっくりと下す。
「こ、こわすぎ……」
涙目になった結の目元を拭う。
「遊郭からだいぶ離れたし、ここからはゆっくり行けるから大丈夫だよ。
もうちょっとだから」
本当はおんぶの方が風がこなくて楽なのだが、抱っこの方が安心感があるだろうから、結の手を首に回させて、膝を持って抱き上げる。
「寒くない?」
「うん。大丈夫。
カカシこそ、重くない?」
「うん。柔らかくて抱き心地最高」
「ふふ、よかった」
今度は目と口をしっかり閉じて、結がしっかりと抱きつく。
少し力をこめて抱き寄せるとオレは再び駆け出した。
目的地につき、結を地面に下す。
「結、手、オレがひっぱるから目は閉じたまま着いてきて」
開きそうになった目を手で目隠しして、結の手を引いてゆっくりと川辺まで歩く。
「開けていいよ」
ゆっくりと目を開いた結が目を見張る。
「わ、すごい……」
川辺には無数の蛍が柔らかな光を放っていた。
ゆらゆらと漂う蛍の光は幻想的ですごくきれいだけど、オレはただ、光を見つめる結のきれいな横顔を見つめた。
「寒くない?」
背後から包むように結を抱きしめる。
「うん、平気。
それより蛍、初めて見た!
すごいきれい!!
連れてきてくれてありがとう!」
無邪気にはしゃぐ結が可愛くて、その頬に手を伸ばし、そのままサラリと髪を梳く。
「結のほうが、きれいだよ」
「へ?」
「顔も、髪も、体も、目も、全部、結が、一番きれい……」
「え?え?どしたん?
カカシ、酔ってる??」
結が顔を赤くしながら戸惑ったように目を泳がせる。