第6章 相反☩そうはん☩感情
涙を散らしながら、走って、………走って、………また走って………。
やがて主の居室へとたどり着いたヴァリスは後ろ手に扉をしめる。
「っ……ふ、…………ーーー〜〜っっ」
両の指で唇を覆い、必死に嗚咽を封じ込めながら、
ずるずるとへたり込むように床に座り込む。
先刻アモンが見せた表情が、
静かに自分を拒絶するような所作が、記憶の箱の錆と重なった。
なぜなら。
(あの日の父さんと、同じ眼……。)
忘れたい。………忘れられない。………忘れてはならない。
(壁を作っているのは私こそなのに、現金なものだね)
自嘲の笑みがそのおもてを彩った時。
ふわりと後ろ背を抱き寄せられ、驚いて涙が止まる。
無言でヴァリスをその腕のなかへ閉じ込め、優しい手付きで彼女を囚えた。