第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
終始盛り上がった男バレの集まりはお開きとなりそれぞれが帰路に着く。
「ただいま」
「おかえりお兄ちゃん!さんのことちゃんと送った?」
「いや、彼氏が迎えに来た。」
「え、あ…部長が…?」
「そう。ごめんもう風呂入って寝るね。」
「うん…おやすみ」
風呂に入って髪も乾かさずベッドにダイブする。電話してみるって約束したし…かけるか。
〜♩〜♩
出ないな…映画観るって言ってたっけ。あと3コールして出なかったら時間置いてかけ直そうかな。
《…っもしもし角名くん?》
あ、出てくれた。良かった。
「あっ、もしもしちゃんごめんね遅くに」
《ううん、どうしたの?》
「特に用はないんだけど…何してるかなって思って」
《特に何も…角名くんは?》
「俺も風呂入ってベッドでだれてるだけだから何もしてないかな」
《…っや》
「ちゃん?どうかした?」
詰まるように絞り出した小さな声は何かを拒否をするようで不安に駆られる。
《ん、あ…っや、めて…ッ》
「ちゃん…?」
仮にも彼氏と誰もいない家に帰って映画を見るって言ってたんだから…この電話の向こうで起きている何かを想像することなんて経験のない俺にだって容易かった。
《あ…、ぅ、や…ッ切って…す、なくん…っ!》
「…え」
《あーあ、のえっろい声角名くんに聞かれちゃったな?》
今聞こえてきてる声は彼氏…か。
あー…さいっあくな気分。
何が悲しくて好きな子が彼氏と致してる声聞かなきゃなんねんだよクソ…ッ。
《や、だ…っ!すなくんおねがい…切って…ん、んッ!》
《あー…の中やっば…くっそ締まるんだけど…ッ角名くんに聞かれて興奮しちゃった?》
《は、あ…っやだぁ…ッすなくん聞かない、で…ッ!》
見えない2人の情事を勝手に想像してしまう自分が嫌だ。聞いた事のない熱っぽいちゃんの声が頭に響く。俺以外の男と…想像するだけでしんどいのに正直に反応する自身も最っ悪だ。
俺は電話を……切った。