第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
合宿の夜は暑い。いつもより人が多いからだろうか、体育館は練習後の自主練をする選手で溢れていて…なんというか蒸し暑い。
それを思えば外はいくらか涼しかった。
何本あげたか分からない木兎さんへのトス。キリのいい所で休憩がてら体育館の外に出ると音駒のジャージをきた女の子が森然の選手に告白をされていた。選手といってもベンチ入りもしていなかった気がするけど。
「一目惚れなんです!付き合ってください!」
『えと…まだ会ってそんなに経ってないし…』
「お願いします!!」
『ごめんね応えてあげられない…』
さっきうちの生徒にも呼び出されてなかったかあの人。天性の人を惹く魅力がある人なんだろうな。それにしても森然の人しつこそうだな。肩まで掴んで…乱暴は良くないでしょ。
彼女がチラリと体育館の方に視線を向け
『…そろそろ戻らないと。ごめんね』
そう告げると
「…つ、付き合ってくれなきゃ死ぬ…かも」
体育館へ戻ろうとする彼女の腕をつかんでまさかの死ぬ発言。明らかに動揺しているし震えているようにも見える。さすがにこれは…
「彼女震えてるから離してあげてください。」
普段の俺ならこんな面倒事絶対にスルーするのに。なぜだか放っておけないと思った。気がついた時には彼女をかばうように間に入っていた。
『あ…かあし、くん?』
「すみません盗み聞きみたいなことして。涼んでたらたまたま見かけて…。」
「…っ梟谷のセッター?まだ話は終わってない!」
「怯えてるのが分からないんですか?」
「…っ」
なんとも気まずい表情をして我に返ったのか、彼女に一言謝って彼はその場を立ち去った。
「大丈夫ですか?震えてる…」
『私が上手くかわせたら良かったんだけど…ごめんね。ありがとう赤葦くんが来てくれて助かった。』
「いえ…とりあえず体育館戻りましょうか。」
『うん、そうだね。』
体育館へ戻ってもなお震えたままの彼女に1度飲み物でも飲んで休憩をしないかと提案をし、再び体育館をでるとすっ飛んできた音駒のミドルブロッカー。