第10章 約束 ( 北信介 )
ドクドクと音を立てる心臓。
それを無視して寝ることにした。
「俺が消すから布団入っとき」
『あ、うんありがと』
パチンと消された電気。真っ暗な部屋。
すぐに布団が捲られて隣に信介くんが来る。
「なんでそんな端っこおるん」
『いや…べ、つに…っ』
「この前は抱きしめて欲しいって言うてたんに恋人同士なった途端離れて寝るんや?」
意地悪く言う信介くんの口元は笑っている。私をからかって楽しんでるんや。昔からこのいたずらっ子のような彼に弱い。
『信介くん意地悪や…緊張してんねん』
「今までも一緒に寝てたやろ」
『そうやけど…ちゃうやん。』
「寂しい言うてんねん、こっち来てや」
手を伸ばす信介くんにゆっくりと近づくと思い切り引き寄せられる。
『な、なあ…心臓もたへんから…っ』
「ははっ、めっちゃドクドク鳴ってんで」
『なっ、言わんでええよ!』
「大丈夫や、俺も緊張しとるから。」
そう言って私の手を自分の胸に当てる。トクトクと早い鼓動を繰り返してて、こんな信介くんは初めてや。それと同時に感じる違和感。
『あ…信介く、ん。なんか当たっとる…?』
「すまんな、生理現象や。」
『こ、これってもしかして…』
あたたかくて硬いもの。
噂に聞いたことがある程度の知識だけど。
「そんな興味もたんとってや。
それともなんや、我慢せんでええんか?」
『…え?』
「彼女と同じベッド入ってんねんから嫌でもこうなるやろ。なぁ、もう待たれへんって言ったらどないする?」
『待たれへんて…信介くん。
付き合うたんは今さっきやで…?』
「付き合うたんは今さっきやけどとこうなりたいと思っとったんはずっと前からや。今まで一緒に寝ててよう我慢できとったわ。」
『ま…待ってや、まだ心の準備が』
「最後までせぇへんから…、
せめてに触れさせてくれへん?」
『それってどういう…っあ、』
Tシャツをまくって滑り込んできた信介くんの手が腰のあたりを優しく撫でるように触れる。ぞくぞくとして変な感覚。
「声我慢やで。」
しー、と触れるだけのキスをした信介くんがいたずらな顔をしていて不覚にもきゅんとしてしまう。