第10章 約束 ( 北信介 )
『宮くん…もうええよ。行こう…っ』
「せやけどコイツ絶対また来ますよ!?
シメとかんとですって!」
『そしたらまた助けて…。
ここに居たくない…。』
「また助け…っ、んん…はい…っ」
この男とおるこの時間が嫌やった。
今後のことなんて今の私の頭にはなくて、宮くんを何とか納得させその場を離れた。
「さん大丈夫ですか?
アイツ誰ですか?」
『他校なんやけど、テニスの大会で応援来とったらしくてたまたまおった私に一目惚れやって…前に1回うちの高校まで告白しに来ててん…断ったんやけど…。』
「ほんま心臓止まるかと思った…」
『宮くんはなんであんなとこいたん?
帰ったんちゃうの?』
あんな暗い道になんでおったんやろ。
「あ、いや…多分あいつ俺たちが学校出たとこから着けとったんやと思います。さんのことは俺が家まで送ればええし、特に話しかけてこんからええかと思ったんですけど、さん1人で帰る言うから心配なって…引き返してきました。」
『わざわざ…?ごめんそんなんさせて…っ』
「いや!そんなんなんでもないっていうか、さんになんかある方が嫌なんで。良かったですギリ間に合って。」
『ほんまに助かりました…っ』
もし宮くんがそのまま帰ってたら…?
もしあとを付けられてたことを宮くんが気づいてなかったらと思うだけで震えが止まらない…。
「さんめっちゃ震えとる…怖かったですよね。ちょっとすんません、あとで殴ってください。」
クイッと引き寄せられた私の体は大きな体にトン、とぶつかって優しく包まれた。
『宮くん…?』
「あとで殴ってくれてええんで…。」
抱きしめられてる…よね。
私よりはるかに背が高くて鍛え上げられた体からは想像もつかないほど優しく抱きしめられる。
『宮くん心臓めっちゃ鳴っとる…』
「好きな人抱きしめてるんやから当たり前やないですか。はあ…ダサくてすんません。」