【MARVEL】This is my selfishness
第5章 5th
「いつもウェイトレス服は見ていたが働いてるのを直で見ると意外とちゃんとしてるな」
『意外とって何?もしかしていつも似合ってないって思ってた?』
「いや?」
含みのあるように笑うバッキーに『カウンターで良い?それとも誰か指名する?』と聞くと「君は指名できないんだろ?」と言われた。
『給仕係だから…時々カウンター内でも仕事するけど指名は…』
「じゃあカウンターで良い」
そう言って、スッとカウンター席に座るバッキーは様になっていた。
これぞ大人の男性…。
しかも自然な流れでロンさんにお酒の注文もしていた。慣れてるなあ…。
その後もキャストさん付きの席にお酒を運びながらチラチラとバッキーの様子を伺い見てしまう。知り合いが職場に来るなんて初めて。
バッキーはカウンターに肩肘をついて、半身を横にするようにして座っていて、ロンさんと喋りながらわたしの動きを見ているようだった。
「何かおつまみは?」
ミアを見ていたらバーテンダーの男に声をかけられた。
「オススメは?」
「そうねえ」とメニュー表を出して数種類のつまみを示す。
その中から適当に選び注文する。
「もしかしてあなたかしら?ミアちゃんのお隣さんは」
「…そうだが?」
「ふぅ〜ん…」
意味深な目で上から下まで全身を見られた。
何なんだ?
「ミアが何か言っていたのか?」
引っ越したことを言ったのは店のスタッフだけだと聞いてはいたがまさか俺の事まで話していたのか?
ミアが自分のことをどんな風に話したのか、気にはなるが同時にそれを聞くのは気が引ける。
バーテンダーの雰囲気的に悪い印象はなさそうだが……
「心優しくて紳士的なお隣さんって聞いてるわ」
ほう。
まあ。
当たり障りのない…
「顔がニヤけてるわよ」
その言葉に口元を手で覆いながら髭を擦る。
「アパートに2人しか住んでないんでしょう?ミアちゃんに変なことしたら許さないわよ」
表の世界の住人とは思えないような凄みを見せられたがそんなものは慣れている。
「…変なことはしない」