【MARVEL】This is my selfishness
第11章 小話2
「ミア、ちゃんとカメラ見ろよ」
『えっ、あっ、うん!』
至近距離で、キスしそうな距離でこちらを向かれて慌てて顔を逸らすように彼が持つわたしのスマホへ顔を向ける。
店内の暗さのおかげで顔が赤くなってるのはバレてないかもしれない。
わたしがカメラを見たのを確認すると、バッキーがもう一度シャッターをタップする。
『ありがとう、』とスマホを返してもらおうと手を伸ばすと、画面にはわたしの頭にまるでかぶりつこうとしているバッキーの姿が。
そのまままたシャッターをタップした。
振り返ると大口を開けたままのバッキーがいて、笑ってしまう。その間もカシャカシャと写真を撮る音がする。
『もぉ、何枚撮ってるの?』
バッキーはわたしのスマホで顔の表情を変えながら写真を撮り続ける。
その枚数の多さに、彼のサービス精神の旺盛さに笑いが止まらない。
ようやく返してくれた頃にはカメラロールにわたしとバッキーのツーショットがたくさん並んでいた。
『ふふ、本当にいっぱい』
「可愛い猫がいたもんでな」
『ありがとう。でもこっちの狼くんも可愛いよ』
たくさんの写真の中でブレてない(カメラを見てなくて笑っているわたしが特にブレてた)写真を選ぶ。
『これ、待ち受けにする!』
と、バッキーに画面を見せながら彼の方を見ると、彼もわたしを見ていたようで────その表情があまりにも柔らかくて優しくて、ドキッとした。
そんな顔で見られてたなんて、、、恥ずかしさに口が言葉も発せずにはわはわと動くだけになる。
「あとで俺にも送っといてくれよ?」
『う、うん、』
バッキーはわたしを見るのをやめて、残っていたお酒に口をつけた。
いつもの閉店時間より少し早めにパーティーはお開きになり、飾り付けたものはまた明日片付けることになった。
名残惜しいけど、バッキーの狼姿も見納め。
さっきツーショットをたくさん撮ってくれたけど、やっぱりバッキーだけの写真が欲しいと思い、仮装セットを戻しにスタッフルームに行くバッキーを後ろから呼び止める。
そして振り返った瞬間に構えていた指で画面にタップする。