【MARVEL】This is my selfishness
第2章 2nd
計画性があると思いきや、ついつい逸れてしまうのもわたしの愛嬌ということにしておいて欲しい。チャームポイントよ。
だって全部ちゃんと保存しておけば明日以降は一時の間お買い物に行かなくても良いじゃない?
仕事的に仕事帰りに寄れるお店は限られてくるし。
近場で済ませたはずがやっとの思いでアパートについた。
時間もそんなにかけてないと思うんだけど…急いで作らなくては。
小さなエントランスに入る扉の縦に長いハンドルに肘をかけて開けようとするとガラスの扉に影が重なり、スっと開いた。
背中に微かに当たる主を振り返ると、本日わたしが招待しているバッキーがジャケットのポケットに左手を突っ込んで、右手で開けたドアを支えてくれていた。
「どうぞ、お嬢さん」
くっきりとした二重の綺麗な瞳が少し細められた。
『ありがとう』
お礼を言ってドアの向こうに入ると自然なモーションで黒い手袋がわたしの荷物の一部をさらっていった。
「たくさん買い込んだな」
『つい、、、』
「お部屋までお運び致しましょう」
お茶目にウィンクするとまるで演者のように階段を上がるよう促した。
その仕草にクスリと笑って『お願いします』と言い1段目に足をかける。
自分の部屋を通り過ぎてわたしの部屋の前まで来る。
先に鍵を開けてバッキーを振り返った。
『ここで大丈夫。運んでくれてありがとう』
「少しだけだ」
フ、と肩を竦めて今度は玄関の扉を開けてくれる。わたしが中に入ると持っていた荷物を渡してくれた。
「じゃあ14時に」
『ええ』
そう言うと、やっぱり最後まで笑顔で自分の部屋にバッキーは戻って行った。
ふむ、笑顔を絶やさず人に親切…やっぱり彼は大人だ。
余裕のある彼をわたしも余裕をもっておもてなししよう。
何故お礼がお茶会しか思い浮かばなかったんだ、という少しの後悔も打ち消すくらいに。