第2章 家族の絆ー中編ー
「炭治郎くん、私は大丈夫よ」
ほら、拘束されてないでしょ?と炭治郎に両手を見せる。そんな桜を見てホッと息を吐くも、そこで疑問が生まれる。拘束されてないなら何故ここに居るんだ?と。
そんな炭治郎の思考を読み取ったかのように桜はニコッと笑った。
「私も柱なの」
「柱って……」
「簡単に言うと階級の一番上。鬼殺隊の最高位で君の上官」
「え、………ええ?!」
顎が外れそうなくらい大きな口を開けて驚いているが、確実に顎を痛めてるよね。痛くないのだろうか。
「竈門くん、顎を痛めているので大きな口を開けてはいけませんよ。これを飲んで下さい。鎮痛剤が入っているので楽になります」
炭治郎は鎮痛剤が入っている水を飲んだあと、禰󠄀豆子のことについて柱たちに説明した。二年以上もの間一度も人間を食べたことがないこと、人は襲わないことなど必死に話すが柱たちは納得していない。
おまけに柱は過激派が多いのか、「鬼もろとも斬首する!」と言う杏寿郎に賛成する意見が半数近くいる。宇髄に至ってはアホ呼ばわりだ。
「禰󠄀豆子は鬼殺隊の一員として戦える!」
必死に訴える炭治郎の言葉に反応するかのように、離れたところから声がした。
「鬼が何だって?坊主」
泣く子は余計泣いてしまう、鬼も走って逃げていきそうな人相の男、不死川実弥の登場だ。
厄介なのが出てきたなー、なんて軽く考えていると、炭治郎と不死川とで一悶着あった。禰󠄀豆子が刺され、それにキレた炭治郎が不死川に頭突きをかましたのだ。
「「…ブフッ!!」」
静寂の中に響いた二つの吹き出し笑い。言わずもがな、甘露寺と桜だ。
杏寿郎と宇髄、悲鳴嶼、時透に無言で見られ、二人は顔を隠して「すみません」と謝った。だが、そこで終わらないのが桜だ。
「実弥くんに頭突きかますとか…炭治郎くんも成長したねぇ」
ハンカチを目元に持っていき涙を拭う動作をしながらしみじみと言うが、涙なんてものは一滴たりとも出ていない。
むしろカラカラなので目薬が欲しいくらいだ。不死川のような血走った目になってしまう。それはそれでお揃いで面白そうだが。
「あ"あ"?」
声のした方を見た瞬間、目がカッと開いた。
…怖っ!
「桜、今まで何処にいやがったァ!」