第16章 ただ私は春ちゃんの過去の写真が気になっただけなのに【後編】
「春ちゃん…」
「……」
「はるちゃん…」
「……」
「はる、ちゃんっ…」
「はぁ…何ですか?」
春ちゃんの特攻服の裾を掴んで何度も彼の名を呼んで見る。苛立つ様子でこちらを振り返った春ちゃんに対して、反応して貰えたと笑顔を見せると春ちゃんはじわじわと顔を赤くして恥ずかしそうに顔を背けてしまった。耳が真っ赤になっていたから、やっぱり春ちゃんなんだなぁ…と嬉しくなり口角が上がってしまう、振り払う様子はなく不器用で優しい彼に甘えるようにパーカーのフードで顔を隠しながら春ちゃんの後ろを付いて歩いて行った。
ーーー
少し2人で話しをした。この世界の西暦何年であり私の年齢、春ちゃんの年齢…そしてどうして私が春ちゃんの事を知っているのか。女の私が何故外にいるのか…とか。
「俺より…年上、だったんですか」
「それは私が小さいって言ってる?」
「あぁ、まぁ…」
「ふふっ…春ちゃんも良く言ってたなぁ」
「……さっきから俺の事を言いますけど、俺と栞さんって会った事ありませんよね?」
「……そうだね。信じて貰えないかも知れないけど、私未来から来てるんだ…その時未来の春ちゃんに拾われて居候させて貰ってるの」
「……はっ?」
信じられない話しだけど…本当なんだよ?そう小首を傾げて春ちゃんを覗き込む、黒いマスクへ手を伸ばし下へとズラす。驚いて目を見開く春ちゃんの唇の横にある傷を指先でそっと撫でる。
「私、春ちゃんの口元…とっても好きなの」
「っっ…」