第11章 おとぎ話のシンデレラかよ。
「もう上着取っていいぞ?」
「ここって…蘭ちゃん、さんのマンションですか?」
「そうだけど?まだ怪我が痛むだろ、先ずソファーに座ろうなぁ…」
マンションへと連れて来られた栞は、知らない人の家に勝手に着いて来て大丈夫なのだろうか…と表情が強ばっているのがやすやすと分かる。そんな彼女をソファーに腰掛けさせて、逃げ出さないようにチラリとそちらを向いて「大人しくしてろよ〜」と声を掛けた。するとビクッと肩を震わせて、挙動不審に体を縮こませた栞はまるで捨てられていた子猫を拾って来た見たいで何と可愛らしい事か。足の処置をする為救急箱を手に取り彼女の下に跪く。またゆっくりと足を持ち上げてポケットチーフを脱がし、明るい場所で怪我の具合を見る。そこまで酷い状態ではないから安堵の息を漏らした。
「先ずは風呂で足を洗わねぇとな」
「お風呂…」
「何なら風呂入りてぇなら入ってもいいぞ〜?走り回って疲れただろうしさぁ」
「でも私、服とか…下着も…なくて…」
「ん〜?俺のだったら貸すけど?」
「……」
「心配すんなよ、怪我人に手出す程飢えてねぇし…」
ただ足の事があるから、それがちょっとばかり心配になるけれども…そう栞を見上げて苦笑いする。意を決した様子で入りたいと訴えて来た栞に、俺の服と下着を脱衣場に用意すると風呂場まで抱き上げて連れて行く。わたわたと恥ずかしそうに「また抱き上げるんですか!?」と声を荒らげていたが「危ねぇから動くな、落とすぞ〜」と間延びした声を出して脅せば、流石に怖くなったのか途端に大人しくなり控えめに俺のスーツベストを握り締めて来たから「ん゙ん゙っ」と声を漏らした。