第11章 おとぎ話のシンデレラかよ。
「今はこれで我慢しろ〜」
「あ、あの…ありがとう、ございます…」
「!…いぃ〜え♡、それで…お前、名前は?」
「名前、ですか…?水無月、水無月…栞、です」
「栞…栞ね♡俺は灰谷蘭。蘭ちゃんって呼んでな〜?それでさ、何でここにいるの。そもそもお前って女の子だよな…?」
「なんで…と、言われましても…」
ちゃんとお礼を言えるいい子ちゃんに、可愛いなとは思ったがそれ以上に心配になった、もう少し俺に警戒しろよ。俺の見た目からしてもカタギじゃねぇの分かるだろうに…純粋過ぎて逆に心配になる。そんな俺は目の前の女の子へ名前を名乗るように会話を始めて、水無月栞とぷっくりした小さい唇から発しられた声にうっとりした。そして確信を得るようにお前見たいな美人な女の子がどうして夜道を走っているのかという事を尋ねた。彼女は困った様子で眉を下げて不安げに体を震わせている。徐々に綺麗だと見ていた瞳が潤み始めてぽたぽたと涙が地面へと流れ落ちて行った。泣き顔すら可愛いって何なんだろうか、この子は…見惚れつつも狼狽えた俺は、気の利いた慰める言葉すら思い浮かばず無意識に口を開いていた。
「え、ぁ…ど、どうした?心配しなくてももう怖い思いはさせねぇから、蘭ちゃんが守ってやるからなぁ?」
「分からないっ…私も、なんでここにいるのか…わ、分からないのっっ…」
「えっと…つまり、記憶喪失…とか?」
俺の回答に違うと左右に首を振られる、だよなぁ…そもそもこんな美人人生で先ず出逢えるかどうか。くらいのレベルだしなぁ…それに雰囲気からしても如何にも訳ありっぽい、ただずっとここにいて話しをしているとまた訳の分からない男に襲われる可能性すらあるし、まぁ俺なら返り討ちには出来るが…ただ喧嘩すら見た事なさそうなこのお嬢さんが巻き込まれるのは流石に避けたい。