第10章 if…快適過ぎて逆に困る(2)
「栞、今いいか?」
「どうしたの竜ちゃん?」
「えっと…先ず俺にはさ、兄貴がいるんだけど」
「う、うん。お兄さんね?」
「なるべく一緒にいてやりてぇんだけど…俺も何時も栞と一緒にいられる訳じゃねぇし、仕事で帰れなくなった時とか一人で心細い想いをさせるのは気が引けるというか。それで何かあった時とか栞が気軽に頼れる人が少しでもいると違うかなって。だから栞の事を紹介しようかと思ってさ…あぁでも、栞が嫌なら止めておくけど」
竜ちゃんは私を怖がらせないように気を遣ってくれて、そういう提案をしてくれたようだ。でも竜ちゃんのお兄さんだから、怖い人じゃないかな、と包帯を巻かれた手首を優しく撫でる。
「竜ちゃんにはお世話になりっぱなしだから、お兄さんに1度会おうかな」
「本当に無理しなくていいんだぜ?」
「ううん、折角だし会って見るよ。だって竜ちゃんのお兄さんだし…やっぱり仲良くしておきたいから」
「それならいいけど」
「うん、それに竜ちゃんばかり頼りにしちゃうと竜ちゃんも困るだろうから…」
「その件に関しては別に嫌だとか思った事は1度もねぇよ?」
寧ろ俺を頼ってくれるのってすげぇ嬉しいから、心配しなくても構わねぇし何でも相談しろよ?そう竜ちゃんは笑って私の頭を撫でる。私はその手の平に擦り寄るようにありがとうと笑うから、竜ちゃんは身悶えるように胸を抑えて蹲る。それを見て私は吹き出すようにまた笑った。