第10章 if…快適過ぎて逆に困る(2)
「アイスバッグ買って来たから、先ずこれで冷やして?」
「すみません、お手数をお掛けします…」
「良いよ、俺の方こそ痛い思いさせちゃってごめんな?」
竜胆さんのマンションへ連れられて、ソファーに腰掛けた私は何から何まで甲斐甲斐しく世話をさせてしまい申し訳なく思えた。氷水が入り冷えたアイスバッグを手首へと優しく押し付ける、明るい場所で確認したけれど…本当に酷いアザであり、しっかり痕が付いていた為自分自身の体なのにちょっと引いてしまった。
「……もし傷が残ったら、俺責任取るな?」
「責任…ふふ、大丈夫ですよ?見た目程酷くありませんし…心配してくれてありがとうございます」
「ん゙ん゙っ…可愛い…」
竜胆さんはぐっと胸を押さえてもう片方の手で顔を隠して身悶えていたけれど、ふと思い出すように私を見つめて口を開いた。
「そう言えばさ、なんで追い掛けられてた訳?」
「私も良く分からなくて…」
「マジで分からねぇのか?如何にも訳ありっぽかった見たいだけど…」
「……」
「何か理由があるんだろ?相談に乗れるかは分からないけど、言ってすっきりするかも知れないし…先ず俺に言ってみ?助けてやれるかも知れねぇしさ、な?」
そう竜胆さんが私を甘やかすように尋ねるから、私は眉を下げて先程の事を説明した。電車に轢かれていつの間にかネオン街にいた事、但し証明する物はなく頭が可笑しいと思われても仕方ない事など…説明している時、徐々に今置かれている状況に恐怖してしまいぽたぽたと涙が流れた。私本当に元の世界に帰れるの?私には居場所がない、お金は勿論、戸籍がないのだ。あれ?これ…相当不味いのではないだろうか?上手く息が吸えない…息苦しくなり胸元の洋服をギュッと強く掴んだ。