第4章 浦島虎徹 / 守りたかったもの ★
「あ! 主さー--ん!!」
春の昼下がり。
執務室から出たところで、元気な声が聞こえて来た。
眩しい笑顔で、こちらに走り寄って来る脇差が一振り。
「浦島くん、お疲れ様。畑当番終わったみたいだね」
「うん! 見てみて主さん、美味しそうなイチゴでしょ!? 一番大きくて美味しそうなやつ、主さんにあげるね♪」
「ふふ、ありがとう浦島くん」
「へへへ…///」
綺麗な笑顔で受け取ってくれる主さん。
嬉しくてニヤけてしまっていると、主さんの後ろから蜂須賀兄ちゃんが出て来て、呆れたような笑顔のまま、小さくため息を零した。
「浦島、手に土が付いたままになっているぞ?」
「あ、本当だ! 早く主さんにイチゴ渡したくてついそのまま来ちゃった」
「全く…。ちゃんと手は洗うんだよ?」
「はぁい。蜂須賀兄ちゃんは近侍の仕事終わったの?」
「あぁ。書類整理は全て終わらせたから、主も暫くはゆっくり出来るだろう」
「ほんと!? じゃあこの後主さんのお部屋行っていい!?」
「うん、待ってるね」
「やった!! すぐ手洗って来る!!」
そう言って、浦島は元気よく走って行った。
その様子を、主と蜂須賀は微笑ましく見送る。
そして蜂須賀は、遠慮がちな咳払いをした後、そっと主に尋ねた。
「その。浦島はキミに迷惑を掛けていないかい…?」
浦島くんが恋刀となった事。
勿論、蜂須賀も知っているようで。
落ち着かない様子で、言葉を待っていた。
「ふふ。迷惑なんてとんでもないですよ。浦島くんのお陰で、いつも楽しく過ごさせて貰ってます。本当に、毎日が楽しくて…♪」
「そうか、良かった…。まぁ浦島の事だから、特段心配はいらないとは思うが…」
色々聞きたそうな蜂須賀だったが、戻って来た浦島の元気な声が聞こえて言葉を飲み込んだ。
「主さんも蜂須賀兄ちゃんもまだここにいたんだ?」
「あ、あぁ。…コホン。いいかい浦島、主は書類整理で疲れているだろうから、あまり無理をさせてはいけないよ? では主、俺はこれで」
「はい、お疲れ様でした蜂須賀さん」
「大丈夫だよ蜂須賀兄ちゃん!」
そう言って笑顔で見送ってくれる可愛い弟と主に、笑みが零れるのだった。