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涼風の残響【鬼滅の刃】

第24章 予知と鎮魂


あと少しで通路がなくなるところで、風音は足に体重を乗せて飛び上がる体勢を整える。

そうして通路があと三歩で途切れると認識すると、床を蹴り上げて、鬼舞辻の薄気味悪い触手を刀で切り伏せながら目的の場所へ。

「塵屑野郎!珠世さんを返せぇ!」

視界の端に所々赤く染まった、灰色の髪の青年が映った。
距離的に表情まで確認出来ないし、しっかり姿を確認することも出来ない。

触手をさばくので手一杯であるし、何より目的の場所へ赫く染まった日輪刀を突き刺さなくてはならないからだ。

「届いてーー……」

風音が飛び上がった場所には足場がなく、闇が広がるだけ。
落ちれば間違いなく命などない。
珠世を助ける意味でも自身の命を繋げる意味でも、何がなんでも突き刺さなくてはいけない。

届くのか……と全身の痛みを感じながら考えていると、手に確かな感触が伝わった。
鬼を斬る時とはまた違う、吐き気を催しそうな不快な、肉を突き刺す感触。

震えそうになる手にどうにか力を込め、ズブズブと深く日輪刀を突き刺していくと、三寸ほど離れた場所に見覚えのある着物が僅かに見えた。

「このまま切り裂いて珠世さんを……?!」

手早く肉塊を切り裂き手を突っ込んだが、鬼舞辻が大人しくしているなど……虫のいい話はない。

珠世は鬼舞辻の支配から逃れた、鬼舞辻にとって排除したい鬼。
風音は先読みと言う、手に入れることが出来れば、鬼殺隊を根絶やしにするなど容易くなる稀有な能力を持つ人間。

懸念事項は鬼にとって猛毒の血肉を持っていることであるが、回復の糧である人間が山ほどいるこの場では瑣末な問題だ。

二人を取り込むか見逃すかなど秤にかけるまでもなく、鬼舞辻は取り込む道を選び取った。

僅かに見えていた珠世の着物は肉塊に埋もれていき、風音の肉塊の中にある手も徐々に埋もれて、触手の全てが風音に狙いを定める。

だが風音に焦った様子は見られない。

「風の呼吸 漆ノ型 勁風・天狗風」

それもそのはずだ。
視界の端に映っただけと言えど、誰よりも慕い尊敬している人の存在をしっかり認識していたのだから。

「動きづらそうだなァ!その気色悪ィ肉塊、削ぎ落としてやるから待っとけェ!」

風音に襲いかかってきていた触手は、実弥によって全て切り伏せられていた。
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