第14章 炎と風
「なぁ、風音遅くないか?それにあの怯えた表情……ここに十二鬼月でも来るような怯え方だったように見えたんだけど」
「確かに遅いなぁ……アイツに助けられたっていう奴らもここに来てんのに、戻ってねぇし。けど鬼の気配はもう感じ取れないぞ」
それぞれ鬼の頸を斬り落として風音に言われた通り合流場所へと到着した勇と玄弥。
二人は随分前に到着し、他の剣士たちも怪我を負いつつもこの場所へと到着して風音の帰りを待っているのに、風音が帰ってくる気配が一切感じられず嫌な予感で胸を覆い尽くされている。
「俺、様子見てくるけど不死川はどうする?兄貴と何あったのかは知らないけど、不死川さんの継子は放っておかない方がいいと思うけど」
最もな勇の意見に玄弥は手を強く握り締めて地面に視線を落とす。
しかしそれは一瞬のことで、玄弥は勇に返事をせずに森の中へと身を滑り込ませて行ってしまった。
「まぁ、仲間が危険かもしれないって思ったら放っておけないよな。ごめん、ちょっと不死川さんの継子の様子見てくるから君たちはここで待っててくれ。あの子がもし戻ってきたら鴉で知らせてほしい」
全員で森へと突入して入れ違いになっては本末転倒。
勇は頷いてくれた剣士たちに頷き返し、先を行く玄弥の背を追って森の中へと足を踏み入れた。
「まだ鬼の気配はしない……不死川!風音が俺たちを庇って移動してるとしたら合流場所とは反対方向だ!そっちに向かおう!」
「……分かってる!」
どうやら玄弥も無闇矢鱈と森の中を進んでいたわけではなかったようで、勇が予測を立てていた場所と同じ方向に走り続けている。
「あの不器用さがなければもっと人が寄ってくるだろうに……」
そんな一言を呟いてから暫く。
風音がいるかもしれない場所まであと少しという所で騒音が二人の鼓膜を刺激した。
更には身も凍るのではと思うほどの禍々しい鬼の気配が二人の全身を包み込み、思わず立ち止まって日輪刀を鞘から抜き出した。
「これ……十二鬼月どころじゃないんじゃ……ーーっ?!」
身震いした二人の頭の中に、今度は信じられないものが流れ込んできた。
それは自分たちが鬼であろう者に殺される……いやに鮮明な光景だった。