第7章 【第五講 前半】文化祭は何かとトラブルになるけどそれも又青春
「全員で見廻りしたって、結局こんなことになったじゃない」
嫌みのこもった目を、土方は忌々しげな表情で受ける。
講堂から戻った○○は風紀委員の幹部達と合流した。
廊下を歩く○○の目に、最初に入ったのは近藤だった。
人混みの中でもその大きな図体は目立つというのに、彼はクルクルと回っていた。
○○だけでなく、通り過ぎる人々の目を引いていた。
一体何をしているのかと眉間に皺を寄せつつ近づくと、彼の背中が見えた。その背中は赤く染まっていた。
自分の尻尾を追う犬さながらに、近藤は自分の背中を見ようとして回転していたようだ。
近藤は土方に指摘されるまでインクがつけられたことに気づいていなかったという。
「近藤さんまでやられるなんて、風紀委員の面目丸潰れ」
その言葉は近藤に向けられたものではない。
○○の非難は全て土方に集中して浴びせられる。
土方は一つ溜め息をついた。
「全員で見廻ってもこのザマだ。人数減らしてたら、もっと被害が出てたかもしんねーだろ」
正確には全員ではなく、委員長は仕事をせず、遊んでいた所を被害に遭ったのだが。
「全員で見廻って被害が出てることが問題なんでしょ」
土方は苦虫を嚙み潰したような顔で黙る。