第15章 【第十一講】帰ってきた史上最強最凶最恐ヤンキー
「山崎」
校舎の屋上。
○○はプレハブ小屋を監視している後ろ姿を見つけて近寄った。
「差し入れ。あんパンと牛乳」
「ありがとうございます」
○○は山崎の横に屈み、小さな建物に目を向けた。
山崎は制服だが、○○は剣道着を身にまとっている。
「奴等に動きあった?」
「いえ、ありません」
およそ十日前、“奴”が復学した。
銀魂高校創立以来、史上最強最凶最恐ヤンキーとの呼び声が高い不良生徒。
風紀委員会の天敵とされるその男は、○○が3Zに加わるよりもずっと前から停学になっていたという。
山崎は土方の命令で、奴等が根城としている建物を見張っていた。
「もう十日以上経ってるのに、随分大人しいね、高杉って奴」
高杉晋助。
それが、“奴”の名前。彼は同じ3Zの生徒だという。
そして、彼に従属する、河上万斉、岡田似蔵、武市変平太、来島また子の五人が高杉一派と呼ばれている。
「奴等、小屋にはいるの?」
「今は高杉と河上の二人だけですが、大体ここに集まっているみたいです」
復学初日から、銀魂高校には日常と違う空気が漂っていた。
放送部は高杉にインタビューを敢行し、写真部は彼を被写体とし、新聞部はその写真を買いつけて記事を作成した。
廊下に貼られた校内新聞には、人だかりが出来る程。彼への関心の高さがうかがえた。
だが、騒ぐは周りばかり。
当人は問題を起こすことなく、根城としているプレハブ小屋にこもっているようだ。
教室には一度も現れていない。