第7章 あげるから、もらって《松野千冬》●
「ありがとう千冬…私もう死んじゃうかと思った…あ、手洗った?」
「…おう」
Gを駆除し終わり、下着姿のまま家の中をうろつく蛍。
目のやり場に困ってるオレに気づかず、リビングの真ん中に突っ立っているオレの顔を覗き込んでくる。
意図的か?無意識か?
どっちにしろこのままじゃマズイ。
「蛍、」
「なに?」
「…風呂、入ってくれば」
「……え、あ!」
顔だけでなく耳まで熱が集まり、それを手の甲で隠しながら呟けば、ようやく自分の格好に気づいた蛍は慌てて廊下に向かった。
廊下の壁に体を隠してすぐ、頬を染めた蛍が顔だけでこちらを覗きこむ。
「み、見た?」
「…いや、逆に見ない方がすごくねーか?」
「ぅ…ご、ごめん……でも、千冬、」
「ん?なーに蛍」
「…ぁ、う、やっぱりなんでもない!お風呂入ってくるッ」
蛍の言いたいことがわかったから、ちゃんと言わせようと思って聞いたのに。
やっぱり照れ屋な彼女は、シて欲しいことを言えないらしい。
「…焦らされんのキツいんですケド」
慌てた様子で、15分でお風呂から出た蛍の後にすぐ、オレもシャワーを浴びた。
夏も終わりかけ、秋になり始めている今日この頃。
それほど汗をかいてないと思ってたのに、服を脱いでみると体がベタベタしていて。
シャワー浴びる前にヤろうとしなくて良かった…なんて、この後またベタベタになるくせにそんなことを思う。
蛍が使っているらしいボディーソープとシャンプー、コンディショナーを使わせてもらい、あー蛍の匂い…なんて変態くさいことを考えながら風呂場を出た。
来る途中、コンビニに寄って購入した下着を袋から出し、身につけて…服どうすっかな、なんて今さら思いだす。
「…蛍の部屋にオレの着替えあったっけ」
別に、泊まりにくるのは初めてなわけじゃないから。
ただ一緒に…寝なかっただけで。
とりあえず下半身を隠せばいいか…と、下着の上にタオルを巻く。
変だけど気にしない。どうせ脱ぐし。
「蛍、上がった……え〜…」
リビングに向かって目に入った光景。
無防備な姿で、ソファーに横になっている彼女の姿があった。