第3章 【第二訓】ジジイになってもあだ名で呼び合える友達の話
「あ!」
不意に山崎が声を漏らす。
階下へ目を向ければ、黒い集団がうごめいているのが見える。
「貸して!」
○○は望遠鏡を引っ手繰った。
そこに見えたのは間違いなく真選組。
それも、土方や沖田など幹部クラスがゴロゴロ。
こうしてはいられない。
○○は望遠鏡を山崎の胸に押し当てると、踵を返して走り出した。
「トシィ! 総悟ォ! どこにいる!」
隣の建物『ホテル池田屋』へ駆け込むと、声を張り上げて仲間の名を呼ぶ。
「どこにいんの! みんな!」
勇んで乗り込んで来たものの、既に彼等の姿はなかった。
○○は途方に暮れる。
「桂ァァァ!」
○○はターゲットであるテロリストの名をも叫ぶ。
桂の逮捕に貢献する。そのために、○○は現場にやって来た。
そうすれば、自分も真選組の一員だと、説得する材料になる。
名ばかり監察の立場を脱却出来るかもしれない。
隠密活動が主な任務の監察とはいえ、危険に巻き込まれる可能性は否めない。
依然として、数人の隊士は、○○を隊士とすることに反対している。
だが、○○は隊士となることにこだわった。
ただの雑用として真選組に居候させてもらうのは嫌だった。
本人が望むならばと、近藤は監察として真選組の一員であることを認めた。
だが結局、任されているのは屯所内の雑用だ。
「どこに――」
再び声を上げようとした時、その破壊音は聞こえた。
「……総悟の、バズーカ?」