第9章 【第八訓】昔の武勇伝は三割増で話の話
「お登勢さん! 大変です!」
程なくして、新八と神楽が戻って来た。
新八、神楽、キャサリンの三人はゴミ捨てに行っていたが、随分と時間が経っていた。
「お帰り。遅かったね」
それに、キャサリンの姿がない。
戻りが遅かった理由はキャサリンにあった。
彼女の昔の盗賊団仲間が現れ、その道に彼女を引き戻そうとしているという。
今日、来なければ、この『スナックお登勢』に火を放つと脅している場面を新八と神楽は見た。
「ヘェー、そうなんだ」
それを聞いたお登勢の反応は薄いものだった。
「このままじゃ、キャサリン、また泥棒になっちゃいますよ!」
「へェー、そうなんだ」
○○も同じ言葉を呟く。
「○○さんまで!」
「いや、私はキャサリンが元泥棒だったんだってことに感心しただけだよ」
だから鍵開けが十八番なのかと、先程お登勢が言っていたことに納得する。
「ほっときゃいいんじゃね」
銀時のように、神楽が投げやりな言葉を落とすと、
「そうそう、ほっとけほっとけ」
本家本元、銀時が紙袋を抱えて戻って来た。
「銀さん! どこに行ってたの!」
○○は銀時に詰め寄る。
「上に戻っていろいろ探してたんだよ。家賃の代わりになりそうなものを見つけにな」
「家賃の代わり? そんなものある?」
○○は眉をひそめた。
そんな高価なものが万事屋にあるとは思えない。
「これだ」
銀時は得意気にそれをカウンターに置いた。
「お天気お姉さん、結野アナのフィギュアだ」
「あ――」
アンタ、バカですかァァァ!
と、○○が声を上げる前に、銀時はお登勢の手によって店から叩き出された。