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オオカミ少年とおねえさん

第31章 役立たずな言葉と饒舌な体*




「上を抜いた強さの序列は叔父さんが里ん中じゃ一番じゃないかな。 今は」

「…………」


上。
里の序列は始祖のその直系が一番。
もしも琥牙より卓さんが強かったら、そしたら序列は変わる?

ちょっと嫌な想像をしたけど敢えて口には出さなかった。

二ノ宮くんら二人は里の群れの中に入る選択をした。
今さら下克上なんて、そんなこと。


「桜井さん?」


直系……そもそも、里のリーダーはなぜ必要か。
領地を犯そうとする者から守るために。 琥牙が前にそう言っていた。


考え込んでいる私を二ノ宮くんが不思議そうに見ている。

彼はレストランでなんて言ってた?

『なんてったって、琥牙さんは俺たちの』


「二ノ宮くん、あのさ」

「うん?」

「今の里のリーダーって?」

「は? 何言ってんの。 こないだ人狼としては最低限成長した琥牙さんでしょ。 近いうちに里に戻る筈だよ。 桜井さんもでしょ?」


「────そう……だね」


うっかりしてた。

そうだ、その前にそれを忘れてた。

というか、琥牙ってば、なんでそんな大事なことを話さなかったの?


彼の中に住んでるあの里の景色。

最近ぼんやりと外を眺めている、あの視線の先はどこへ向かってた?

私の気持ちは分かってくれてると思う。
里から離れる理由なんてもう無いはずだ。


『もう少し、時間をくれる?』


何のために?


「あーあ、真似事かあ。 だからあん時向いてないって断ったんだ。 そもそも俺らの実戦って趣味やスポーツじゃないもんな。 でもそうバッサリ切られちゃうと、痛いよねえ……」


彼が大事なことを黙ってる時には理由がある。
大概重大で、大概私や他の存在のため。

彼の周りで何が起こってるの?



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