第67章 七支柱春药 〜壱〜 / 🌫️・💎・🌊・🐍・🍃・🔥・📿
「俺思うんだけどさ、お前の願いってわざわざ血鬼術に頼らなくてもいけんじゃね? 一言相手に伝えればいいだけじゃん」
「それが…出来たらこんなまわりくどい方法は選んでません」
「身内だから言いにくいって事はあるかもなー。前はそこまで仲が悪かったわけじゃないんだろ? 弟が生まれてからか」
「そうですね」
七瀬が叶えたい願いと言うのは、母の春奈との仲を元に戻す事だ。
売り言葉に買い言葉をぶつけ、逃げるように家を出て来た彼女だが、家族と離れて一年以上。
気持ちも大分落ち着き、母に対してひどい事を言ってしまった。ここ二ヶ月はそんな思いばかりが胸を支配する事が多くなっていた所へ龍の鬼と遭遇したのである。
「まずは手紙で謝ろうと思って筆を取るんですけど、手が止まってしまって。そこから全く進まないです。実家に帰省しようと思って何度か近くまで行った事もあるんですが…」
「足が止まるってわけか」
「そうです…」
ふうと短いため息をついた七瀬は、春奈の事を思い出す。
弟が生まれるまでは多少口うるさい事はあったが、兄二人と比較される事はあまりなかった。
「お姉ちゃんなんだから…って言われるのが、いつも嫌でした。私はお姉ちゃんになりたいわけじゃなかったのに」
「それ、多分お前の兄貴達も同じ事感じてたんじゃねえの」
「そう、でしょうか」
ふう、ともう一度ため息をつく七瀬を、天元は自分の胸の中にそっと引き寄せる。
本当は血鬼術の影響で今すぐに彼女と一つになりたいのだが、今は頃合いではない。そう判断した音柱はググっと欲望を押さえ込んだ。
『あー、もうこいつん中に入りたくてたまんねぇ。けどここでそれすんのはなあ』
暴れ出してしまいそうな下半身をなけなしの理性で必死に留める天元だが…。
「何であんな事言っちゃったんだろ」
『ああ!! クソっ! 何で今そんな弱音はくんだ、こいつ…!!』