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恋はどこからやって来る?(短編・中編)

第66章 クリスマス🎄お題夢 / コミュニティ内で募集



足りない料理も作り終えて準備は万端。

津美紀と恵はテーブルの前でそわそわしながら待っており、伽那夛が飲み物を注いでいると、配膳を終えた甚爾がぼそりと呟いた。


「俺には何かないの?」

「なんでよ?」

「来週、俺も誕生日」

「年末なの?」

「そ、大晦日」

「大晦日?……私、多分無理よ。年末年始は家の行事が忙しいもの」

「実家嫌いのオマエもそういうことは真面目にやるんだな」

「本っ当に嫌だけどね。あなたの実家だって忙しかったんじゃないの?」

「俺はいねぇ者扱いだったからな、そういうのとは無縁」

「何それ、羨ま……んんっ、失礼、今のは忘れてちょうだい」

「オマエ、ホント律儀だよな」


ちなみに古い慣習に固執する御三家にはキリスト教徒はおらず、クリスマスを祝うこともない。
だから伽那夛はここに来ている訳で、年末年始はどんなに出たくても家から出られないだろう。



「なら拐ってやろうか?」


甚爾の言っていることが理解できずキョトンとする伽那夛にもう一度言う。


「オマエ、よく誘拐されるんだろ?だったら面倒くせぇ家の行事の間、拐われちまったことにすればいい」


伽那夛は目を丸くした後、フッと笑った。


「……ありがと。でも遠慮しておく。その代わり年始の行事がひと段落したらまた来るわ。その時はご馳走を……まぁ、作ってあげなくもない」

「ははっ、どっちだよ」


そんなことを話していると、居間から津美紀の声が掛かる。


「2人とも、早く早く!」





普段の食卓とは違い、丸いローテーブルの中央には数々のオーナメントに飾られ、天辺に星が輝く2つのクリスマスツリーが置かれ、その周りにご馳走が並ぶ。

マリネにミネストローネ、メインディッシュのジンジャーチキンソテー。

香りだけでも食欲をそそる料理を前に、この日をお祝いするための号令をかけた。



「メリークリスマス!」




勿論ご馳走の後にはケーキを出し、“Merry Christmas”と書かれたプレートを少しずらして隣に伽那夛が買ってきた“Happy Birthday”プレートを並べ、6本のロウソクを立てて恵の誕生日を祝い、照れる恵の隣で津美紀は満面の笑顔を浮かべるのだった。



ー了ー


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