第9章 あなたの愛に包まれて*後編 上* 宇髄天元
何か言わなきゃほんとにやめてくれなさそうなので、「喋りにくいです!」と遊んでいる宇髄さんの手を無理矢理引き剥がした。
すると宇髄さんはおもちゃを取られた子どもみたいに「ちぇっ」とつまらなそうな顔をした。
やっぱり面白がってた…
「で?何考えてた?」
「…やっぱり今は内緒にしたいです」
「内緒?」
一緒になれるまで、あともうちょっと。
だからこれは、本物の家族になったその時に、言いたいなって思うから。
「その時が来たらちゃんと言います。だから、今は内緒にさせてください」
そう言うと、宇髄さんは「分かったよ」と私の意を汲んでくれて、それ以上の追及はしないでくれた。
「“その時な“。約束」
「はい」
空いた手で私の頬を撫でながら、優しく微笑む宇髄さん。
私の我儘聞いてくれてありがとう。
嬉しくなって、思わずぎゅっと抱きついた。
「おっ…と。はは、お前ほんと可愛いな」
抱きしめて、愛おしそうに頭を撫でてくれる。
心地良くて、ずっとそうしてて欲しいと思ってしまった。
ここが、どこだかも忘れて…
「イチャついてるとこ悪ィんだがよォ…。コーヒー冷めちまうぞォ」
…。
ぎゃあ!
「すすすみません!」
私ってば人の家でなんて事を!
慌てて離れようと宇髄さんの胸を押しやると、そうはさせまいとでも言わんばかりに逆に思いっきり抱き込まれた。
「宇髄さんっ、ちょっと…!」
「なんだよ、嫌?」
「嫌とかじゃなくて、ここ不死川さんのお家なので!」
「テメェらよォ…」
「なによー不死川。あ、もしかして羨ましいの?」
「ァ“ア“ッ⁈」
宇髄さんの挑発めいた発言に、不死川さんの青筋が見る見るうちに増えていく。
ヤバイです。
ピキピキいってますよ。