第8章 あなたの愛に包まれて*中編 下* 宇髄天元
「言っただろ!俺には気ぃ使うなって!俺はお前らに迷惑かけられたってなぁ、ちっとも迷惑だって思わねぇんだよ!だから隠すな!お前は一人じゃねぇ!ちゃんと頼れ!分かったか⁉︎」
俺が怒鳴り切ると、部屋はシン…と静まり返る。
ハッと我に帰ると、目の前には言葉を失いただ呆然とする紗夜。
……やっちまった……
こんなはずじゃ、こんな怒鳴り散らすつもりなかった。
今更猛省するも時既に遅し。
なんと言っていいか分からずに、ただ時間だけが過ぎていく。
ひたすら黙り続ける俺達。
この沈黙を破ったのは、
「てんげんおにいちゃん…」
奏真だった。
「っ悪ぃ!うるさかったな、ごめんな」
「……ママにいじわるしちゃダメだよ」
「は?いじわる?」
「ママ泣いちゃった」
そう言って奏真はほらっと紗夜を指差した。
………。
マジかよ‼︎
さっきまで呆けていた紗夜は大粒の涙を溢し、ハラハラと泣いていた。
泣かせちまった……
「おっ、おい紗夜!悪かったからっ…泣くなって!」
「ごめんなさっ…うぅっ…」
やべぇ、余計に泣くし…
泣かせるはずじゃなかったのに。
何やってんだ俺は…
好きな女が泣いてるってのにどうしたらいいか、柄にもなく狼狽える俺。
いつもの俺はこんな時、どうしてた?
忘れちまうくらいテンパる俺に助け舟を出したのは…
「てんげんおにいちゃん。わるいことしたらごめんなさいだよ」
またもや奏真だった。
「あぁ…そうだよな。紗夜、ごめんな?」
5歳に仲直りの仕方を教わる俺。
そうだな、俺が悪かった。
ここは素直に…ごめんと謝ってみる。
「ぅうぅっ……!」
紗夜は泣きながら首を振った。
……なんで今首振った?
まさか、俺が怒鳴ったから怒ってんの⁈
俺嫌われたのか…?
嫌だ…それだけは…
激しく戸惑う俺に、奏真が更に続けた。
「てんげんおにいちゃん、ぎゅってしてよしよしだよ」
……。
奏真、お前はホントに5歳か?