第9章 純黒の悪夢
プンプンと半ば呆れ気味に言うと、2人はクツクツと肩を鳴らし笑いだした
「……?」
予想していなかった状況に首を傾げていると、零が近付いてきて頭にポンと手を置かれる
「大丈夫、ただ叶音を待っていただけだ」
ん?ずっと睨み合って待っていたのか…?
奴と決着を着けるのはお互いが万全な時にと、冗談なのか本気なのかわからないことを言う零
その向こうに、やれやれと両手を顔の横で広げる赤井が見えた
そして零に手を引かれて赤井の所まで連れて行かれる
「FBI、僕の気持ちに反するが、最後に頼みがある」
「…君はいつも一言多いな」
今まで何も言わずに挑発で返していた赤井が、ついにつっこんだ
「うるさい黙れ。僕は今から倉庫街へ車を取りに行かないとならない。不本意だが、叶音を家まで無事に送り届けて欲しい」
倉庫へオレを連れて行って組織の連中の目にでも入ったら困るからと理由を付け足される
そういえば、零はあの倉庫に車で行き、そこに車を置いたまま逃げ出したんだ…
ここまで来るのも大変だったろうに、また戻るのも更に大変そうだ
「近くまで送ろうか?」
「いえ、あなたにこれ以上借りは作りたくありませんので」
赤井の好意に再びバチバチと視線で攻撃する零
人に頼み事をする態度ではないのは明らかだけど、この2人はこれで会話が成立しているから良いのだろう
それに零が赤井を睨みつけるのはもうクセなんだろうなとスルーすることにした
「…昨夜のハロ君にそっくりだな」
「何ィ!?」
「あ!そうだハロ!!」
赤井からハロの名前が出て思い出した
「零、ハロを工藤邸に避難させたんだよ…」
誰もあの家に戻れなくなってしまったら困ると思って…と昨夜の事を思い出しながら経緯を説明をした
「ハロがなかなか赤井に懐いてくれなくて威嚇しててさ…」
「それが僕にそっくりだと…?」
「あぁ」
赤井の即答にまたもや零の何かがプッツンと切れ…
「赤井秀一!今すぐここで決着をつけてやるっ!!」
「望むところだ」
赤井に殴り掛かろうとする零と、ジークンドーの構えをする赤井を全力で止め、これ以上拗れない様にこの場を移動することにした
零とはここで別れ、工藤邸で落ち合うことになった