第6章 魚人と人間
アーロン side
この俺がっ…!あんな下等種族なんぞにっ!崩壊していくアーロンパークを見つめ怒りが込み上げてくる。結局、俺達は人間に虐げられる運命なのかっ…?
(ちくしょうっ…!)
身体も動かねぇ…俺もここまでかと迫りくる瓦礫に目を閉じるが一向にそれは襲ってこねぇ。
「…大丈夫?」
「花子…?」
目の前に現れた花子と俺を守る様にドーム状の何かが覆っている。何だ?何が起こっているんだ?
「…俺を笑いに来たのか?」
下等種族だと蔑んできた人間に負け、野望も打ち砕かれた…。こいつも…もう俺と関わる事はないだろうよ…。
「ねぇ…アーロン。やっぱり人間は憎い?」
「…何を今更。」
人間は俺の大事なモンを奪っていきやがったっ。自分達がしてきた事を知ろうともせず、種族が違うだけで俺達魚人を恐れ蔑む低能で愚かな種族だ!だが…。
(お前の事は…嫌いじゃなかった…。)
花子とユラは他の奴等と違う。俺達を恐れる事なく、真っ直ぐで温かな瞳をしていた。その目が疎ましくもあり心地良かった…。
「私達…もっと別の形で出会えていたら良かったのにね…。」
もし…人間が俺達を恐れなければ…俺が人間を憎んていなければ…未来は変わっていたのか…?
ーだから頼む!お前等は島に何も伝えるな!俺達に起きた"悲劇"を…!人間達への"怒り"をっ…!ー
なぁ…タイの大兄貴は何を望んでいたんだ…?大兄貴の言葉を思い出していると辺りに突風が吹き荒れ周りの瓦礫を吹き飛ばしていく。
「じゃあね…アーロン。もし、また出会えた時は…。」
ーその時は、人間も魚人も関係無い世界で会いましょう…。ー
太陽に照らされた花子は美しく、ふと幼い頃に出会った人間の女の事を思い出す。
ーいつか…人間も魚人も関係無い世界は来る筈よ。ー
(そうか…お前は…。)
そんな馬鹿げた事、ある訳無いと思った。だが、その女は今の花子みてぇに穏やかな声をしていた。
ー俺はっもうっ…人間を…愛せねぇっ…!ー
すまねぇ…タイの大兄貴…。あんたが拒んだ人間を…愛せないと涙ながらに言った人間を…。
(俺は…愛しちまった…。)