第8章 大切で残酷な暖かい過去
ユリス
「この魔法は魔力が強くねぇと出来ねぇが…お前は魔力が馬鹿ほど強ぇからな。問題ない」
自分よりも強い魔力を持っているんじゃないかとユリスは思う。
だからこそ、レティシアの魔力に対抗出来るユリス程の魔力を持つ魔法使いしか証をつける事は出来ない。
ユリス
「良いか?」
レティシア
「うん……、ぁ…えっと…」
ユリス
「何だ?」
レティシア
「…痛い?」
ユリス
「いや、暖かいくらいだ」
彼が優しく告げるとレティシアは安心した様に右手を差し出す。
その幼い右手をユリスが掴み、彼の大きな右掌がレティシアの手の甲へ翳される
ユリス
「リディープル」
ユリスが呟くと淡い光がレティシアの手の甲へ広がり1分後、彼の掌がズレると少女の甲には複雑な模様の証が刻まれていた
ユリス
「レティシア、想像するんだ。ジルの成長はとめずに小さくする事を」
レティシア
「………」
幼い手を座っているジルヴァに向け目を瞑ってユリスに言われた事を想像する。
それを想像するのに少しだけ時間がかかったが
レティシア
「フィピテオ」
だが、手袋をしていない為ジルヴァの身体の大きさは変わらなかった。
レティシアの身体から力が抜け膝から崩れるも、それをユリスが抱き留める
ユリス
「レティシア、もう少し頑張れ。…手の甲にお前の魔力を流し込め。さっきのイメージとそれに蓋をするのを想像しろ」
レティシア
「…うん」
証が刻まれている手の甲に左手を翳してまた集中し、呪文を呟くと光っていなかった筈の証が淡く光る
ユリス
「良く頑張ったな、レティシア」
彼の腕の中で脱力し額に汗を滲ませ、僅かに息を切らしている少女にユリスは優しく微笑む。
それを見たレティシアは安心したのか瞼を閉じて眠りについてしまう
ユリス
「お前、今より大きくなんのか…どれくらいでっかくなんだろうな」
ユラユラと尻尾を揺らしているジルヴァを見ながらユリスは笑った。
今はまだ小さい方だが、ジルヴァが本来の大きさに戻ったらこの庭でも狭いかもしれないなと思ったのだ