第26章 呪縛と秘密
ジルヴァは頭を撫でてもらった事とリボンをつけてもらえた事が嬉しくて、その場で飛び跳ねる。
ソフィア
「皆さん、お迎えの車が到着した様です」
液晶を見ながら伝えられたそれにルシアンとリアムは頷いたものの、レティシアは溜息を吐いてから仕方無く頷く。
フェリックスが用意してくれた車でフォンテーヌ家へと向かう。いつも通りに見えるがレティシアの表情はどこか強ばっている。今では圧倒的な力を持ち負ける筈がないのに、呼吸が浅くなりそうになるのは…彼女の精神を長年縛り付けてきた母親という存在が大きく関係しているのだろう。
今がどう、とかでは無く…幼い頃に強く染み付いた暴力と暴言の支配が記憶にも精神にも身体にも…ずっと残っているのだ。
ルシアン
「大丈夫だ、レティシア」
隣に座っていたルシアンの手が僅かに震えるレティシアの手を覆った。昔と変わらない大きくて暖かいルシアンの手…いつもレティシアが何かに呑まれそうになると、引っ張り上げてくれる手…。
レティシア
「ありがとう…ルシアン」
リアム
「ルシアンさんの言う通りだ。大丈夫。…俺達がいるんだから」
ジルヴァ
「ウゥ…!」
リアムの強く暖かい言葉とジルヴァの強い視線に、レティシアは気が付いたら口角を上げて笑んでいた。
そして、3人のおかげで彼女の震えていた手はいつの間にか止まっていた
裕福女性
「まぁ…あの方達は?」
裕福男性
「何と…美しい方なんだ…」
裕福女性
「本当に美しい方ね…」
裕福女性
「あの方…とても素敵な方ね」
裕福女性
「ええ、すっとしていて…素敵ね」
裕福女性
「お隣の方も素敵だわ…ふふ、少し緊張しているように見えるわね」
レティシア達がフォンテーヌ家のホールへ入った瞬間、一気に視線を集めた。
参加者女性のように宝石をつけたりせず、ドレスもシンプルであるのに…とても華やかな姿に男性だけでなく女性までもが感嘆する。
ルシアンのすらっとしたスタイルとどこか頼もしさを感じる表情と雰囲気に女性は見惚れる。
リアムのさらりと揺れるミルクティー色の髪が高貴さを感じさせるも、初めての場所で緊張しているのが空気で伝わり…女性達へ愛らしさを与えている
3人が…それぞれに注目されていた