第21章 対象者の壁となれ
ドレイク
「君どこかで見た事が…」
レティシア
「こんな顔どこにでも居ますよ」
ふわっと笑みを浮かべるレティシアを見て、その美しさにキールだけでなく女性であるランナまで思わず息を呑む。
ドレイク
「いや、君のように美しい子はそうそういない。…はて、どこで見たか」
ルシアン
「それよりも会合の時間が迫っているのでは」
ドレイク
「ん?おお、そうだったそうだった。早く出発しよう」
ランナ
「はっ」
ルシアンの助け舟によりレティシアがフォンテーヌ家の人間だと思い出されずに済んだ。
キールは運転席に、ランナは助手席へ乗り込み…レティシア達もその車へと乗車した。
車内は思ったよりも広く中間部にはルシアンとリアムが、後部座席のドレイクの隣にレティシアとジルヴァが並んだ。
リアムは初めての護衛任務という事もあり常に警戒を解かないようにと、窓の外へ視線を向けたまま瞳を忙しなく揺らす。
対してルシアンは特に視線を揺らす事なく、ただ座っている
ドレイク
「して、誰が魔法を使えるんだい?」
どこかわくわくしているような表情でドレイクが言葉を発する。すると、彼の隣に座っているレティシアがドレイクに見える様に掌を晒し咥内で呪文を唱えると、ぼっと小さな音を立てて赤い炎が揺れる。
ドレイク
「おおっ…君が魔法を使えるのか。いやぁ、これは凄い…!」
レティシア
(呑気だな…)
まるで少年の様にはしゃぐドレイクを見てレティシアはそう思わずにはいられなかった。自分は命を狙われているというのに、こうも危機感が無くてはドレイクを守るという命を受けた彼等がより一層の緊張感を持たなくてはならない。
溜息を吐き出したくなるのをレティシアは何とか耐え炎を消す
暫くすると車はゆっくりと停止する。
まだ目的地では無いためレティシア達は不思議そうな表情をする。ルシアンが運転しているキールに声を掛けようとするが…
ドレイク
「さぁ、君たち降りた降りた」
リアム
「何だ…?」
その言葉を理解出来ないレティシア達3人は不思議そうに顔を合わせつつもドレイクに言われた通り降車する。