第6章 手のかかる猫
ーー彼女は、最上の褒め言葉に【綺麗】という言葉を好んで使う。それを使われたという事はーー
「あはは、反省してるなら今日の『簀巻きの刑』はこれくらいにしようか」シュルッと縄を外す羽京に、本当ですか!前みたいに夜通し簀巻きじゃないんですな!?やったー!と喜ぶ葵。
無事に縄と布団が取れて、わーい!!とベッドから降りようとする葵を、ぎゅっと抱き締める羽京。
「…………へ」
あの、簀巻きの刑終わりなので部屋に帰っても良いのでは…??と問いかける葵。
「『簀巻きの刑は』終わりだよ。でも、このまま部屋に帰すとは言ってないよね?
……今度は更にキツいお仕置が待ってるよ」
身体を薄いワンピースの上から拘束されたまま、
壁に押し付けられる格好になる。
「そ、そんにゃ…んっ……!」
文句を言おうとした口を、羽京の唇が塞ぐ。
ーーしかも長い。息が出来ない上に、身動ぎすらも許されない。
「んん……っ…ぷは……!!……な、なにを…」
「あはは。君風に言うなら、【拘束キスの刑】かな」
「極刑過ぎますーーーっ!!!」瞳をうるうるしつつも、その顔はほんのりと赤くなっている。
ーー可愛いなあ。
羽京がそう思いながらニコニコ見てると、葵がぽそっと呟く。
「は……て、な…に…」
「え…………」
【初めてなのに】
耳はそう確かに音を拾った。普通の人なら聴こえない、僅かな息をも聴き取る羽京だから出来た芸当だ。
嘘だ、と思って彼女をじーーっと見詰める。見詰めれば見詰める程、ぷるぷるしながらどんどん顔が俯いていく。
……彼女は世間で言うところの、所謂美人だ。
蒼い海の様な煌めく大きな瞳。風に揺らぐ腰ぐらいまで伸びた白銀のロングヘア。華奢だが程よく肉付きの良い、綺麗な身体をしている。
その上ゆるりとした話し方、ロングスカートにモフモフとしたポンチョを着た愛らしい姿で、周囲を魅了する。
正直、キスのひとつやふたつどころでは無いだろうし、自分の方が経験が無いと思っていたので意外だった。