第8章 帰り道(岩泉)
つい思わず、ジーーーっと見てしまった。
いや、だって
髪型だけでこんなに印象変わるもん?って。
「あ?!もしかして臭かったですか?!
バイト後の臭い、すごいんですよね………」
突然自分の髪や服をくんくんと匂うに
思わず笑ってしまった。
「あ、いや。そうじゃなくて。
なんていうか、あの。
髪下ろすと、やっぱり雰囲気違うのな」
「え?!そう、ですか?
あ、でもバイト中は結んでるから、ですかね?
てか今日どうしたんですか?」
どうしたのかと聞かれると
「あ、いや。飲んでて。
で、バイトだったら
ちょうど帰る時間一緒かなって思って」
というのは口実だけど
本来の目的なんて、言えるはずはない。
「そうだったんですね!ありがとうございます!
いつも一人だから嬉しいです!」
あぁ、やっぱり
この笑顔が好きだ。
「おう。じゃ、帰るか?」
「はい!」
先に歩き出すと、小走りで俺の隣に並ぶ。
普段は歩くのは早い方だと思うけど、
の歩幅とペースに合わせる。
それが、今と一緒にいるのか
という認識になって、
思わず反対を向く。
「どうしたんですか?」
「いや、別に」
あれ?
"今まで通り" ってなんだっけ?
自覚してしまった俺は、どうやら面倒らしい。