第2章 みんなのいない朝
「どこにも行かないでください」
「どこにも行きませんよね?」
どこからか五虎退と前田が、言いながら抱き着いてきた。
白い細腕のどこからこんな強い力が出るのか。
普段と比べものにならない強さで手足が搦めとられ、身動きできなくなる。
よく見渡せば、五虎退たち以外の刀剣男士の姿もそこかしこにあった。
近くにも遠くにも、まるで私を監視していたかのように男士たちがいた。
今、唯一外界に行く手段のゲートに近づこうとでもすれば、斬られるのでは。
そんな思考が浮かんだ。
恐怖。
心を、思考を塗りつぶしていく感情は、足が竦んで指先の血管まで凍りつくような恐怖だった。
それから困惑。
彼らに何が起きたんだ?
そもそも、彼らは誰なんだ?
けれど、自分の感情に浸っていることは許されなかった。
彼らから、痛いくらいに伝わってくるのだ。
悲痛なまでの、"見捨てないで"という哀願が。