第12章 侵入作戦
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保管室がある西棟。
ここに入るには、とても見晴らしがいい中庭を横切るしかない。
審神者が仕入れた情報によると、中庭周辺は警備員の巡回ルートの内だという。巡回は完全にランダムで、避けることが困難らしい。関係者以外立ち入り禁止の区域につながる、唯一の通路だからだろうか。
今日の設定天気は、軽やかな快晴。小春日和のような、穏やかな暖かさを感じる陽気である。
中庭はだだっ広く、人工的な趣きの細い樹木が申し訳程度に植わっている。中央には、何かしらの魚が泳ぐ円形の人工池。あとは、職員が休憩するのかベンチが数台ほど。さんさんと降り注ぐ陽の光のもと、ベンチに座ってお昼ごはんでも食べるのは、とても心地いいだろう。
がしかし、人一人が隠れるような物陰はない。そればかりか、警備員の巡回ルートとなっている。
そんな中を、誰の目にも入らずに通り抜けるにはどうするか。
「おい、どこ行くんだ。持ち場を離れるなよ」
「おまっ、聞いてないのか!?」
「なんのことだ?」
「刀剣様がとんでもない失くしものしたってんで、南棟の方で大騒ぎになってんだ!」
「失くしもの?」
「お守り極100個!」
「ブフッ」
噴き出しかけるが、慌てて口元をおさえ最小限にとどめる。
中庭に隣接した廊下の物陰で、鶯丸は警備員同士の会話を盗み聞きしていた。“南棟の大騒ぎ”とは、もちろん陽動だ。乱が部隊長のはずだが、お守り極100個、という安直で適当感のあるチョイスに、またもや噴き出しかける。
モノはなんでもよい。それ自体には頼らない。
だって、ボクの演技で舞台に引きずり込んじゃうから。
そんな、自信に満ち、妖美に笑む乱が容易に想像できた。きっと真に迫る演技で、つい探すのを手伝ってしまうような、涙ぐましく健気な姿でそこらじゅう一帯を魅了しているに違いない。