第9章 遊廓
襖がそっと開き
『泰葉、さあ、お客様だよ。』
泰葉は天元が店に直接指名を入れたのだと思い、
安心して立ち上がる。
そして、玄関に迎えにいくと
そこにいたのは…
『あぁ、可愛い泰葉。
君はどんな格好をしていても、やはり綺麗だね…』
そこには天元ではない一人の男が立っていた。
泰葉のことを、ずっと追い回し
挙句にはここに売り飛ばした張本人だ。
「あなたは…」
泰葉はこの男の顔を覚えていた。
この男は今まで写真を変えて15回も見合いの話を持ちかけてきた。
そして、一度だけ会ったことことがある。
見た目は普通の青年。
しかし、彼との会話や、雰囲気に異様なものを感じた。
泰葉への執着がすごい。
このまま一緒になれば監禁どころではないと思った。
その時は1時間ほどで、断りを入れ破談となった。
しかし、それでも見合いを持ちかけてきた。
両親も流石に危ないと思って、二度目の見合いからは両親が断り続けていた。
そしてこの結果である。
泰葉はカタカタと震えた。
『泰葉、お客様を待たせるんじゃないよ。
さっさと部屋へお通し。』
店の女将は急かした。
他の女の子のためにも、ここで騒ぎは立てられない。
その男を相手にするとあらば、天元は来れなくなってしまうだろう…
泰葉の気持ちは、絶望だった…。
震える手で、襖を開け
中に入るよう促した。
『そんなに震えないで。
こんな所にいたら怖いだろう?
君は客を選ぶ事はできない。汚いおじさん達が君を買うかもしれない。
僕は君を救ってあげる。
愛する君をここから救って、夫婦となろう。』
男は洗脳しているかのようだった。
『僕の名前は祐一。
君を愛し、救い出す男の名前だからね…。』
耳元で囁くように言われる。
泰葉は悪寒が止まらない。
助けて、お父さん、お母さん。
隣の奥さん。
炭治郎くん達…
「煉獄さん…」
煉獄
その名前を口にした時、祐一が不機嫌になったのが分かった。
祐「祐一、君が口にしていい名前は、祐一だ!
次にその名を呼んだら許さないからな!」
畳を拳でダンッッと叩きつける祐一。
ビクッと身体を跳ねさせる泰葉。