第35章 壊れた愛の絆
「でもマイキーくんにここまで強く嫌われたのは初めてです」
「初めて?」
「はい」
「ふぅん…じゃあ記憶を失くす前のオレは相当オマエに惚れ込んでたんだな」
「そうですよ」
「!」
「マイキーくんは僕のことが大好きで大好きで仕方がなかったんです。人前でも気にせず抱き着いて来て、離れてって言っても離してくれない程、僕を溺愛していたんですよ」
「オレが?オマエを?ハッ…良くそんな嘘がペラペラと出てくるな。それでオレが信じるとでも思ってんのか?」
馬鹿にするようにマイキーは笑う。
「信じるも何も事実ですから」
「……………」
「そして、そんなマイキーくんが僕も大好きで大好きで仕方がないんです。だからいくら傷付けられても、嫌われても、僕はマイキーくんに会いたいって思うんです」
「あっそ。でもオレは好きじゃない。勝手に会いに来られても迷惑なんだよ」
「……………」
何かを堪えるようにカノトは掌をギュッと強く握りしめる。
「何でオレ、こんな奴に惚れちまったんだろ。正直、オマエのどこに惹かれたのか全く理解できねぇ。顔がイケメンってだけで惚れたとも思えねーし…一番オレと関わりなさそうなタイプなのに」
「(さっきから好き勝手言わせておけば…)」
「何?こっち睨んで。言いたいことがあるならハッキリ言えよ」
「マイキーくんは僕が男だから恋人だと認めたくないんですか?それとも…他に好きな人がいるから、無理やり僕の存在を記憶から抹消しようとしてるんですか?」
「!!」
「驚いた顔してますね。"好きな人がいる"からそんなに目を丸くさせてるんですか?」
わざとっぽく笑う。
「…意味わかんねえよ。好きな奴?いるわけねーだろ。勝手に決め付けんな」
「碓氷海凪ちゃん」
「っ、」
その名前にマイキーは明らかに反応を示す。カノトはそれを見逃さなかった。
「テメェ…何で海凪を知ってんだ」
「知ってますよ。だって好きな人の初恋の人ですもん」
ガラリと雰囲気を豹変させたマイキーがキレた顔とドスの利いた低い声でカノトを鋭い眼光で睨みつける。
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