第58章 かつての仲間と共に
「ねぇルナちゃん。今から僕と一緒にお兄ちゃんのご飯作らない?」
「え?」
ルナは突然の提案に驚いた様子だったが、カノトはにこりと笑んで、部屋に上がらせてもらった。
「(これは想像以上…)」
片付けられていない真っ暗な部屋で作業をする三ツ谷の姿があった。
「(食べ終えたカップ麺とそこら辺に転がるお茶のペット…。こんな食生活を続ければいつか体調を崩す…。)」
「あー!!くそっ」
「キャッ」
思うように描けないのか、苛立つように紙をグシャグシャに丸めて投げ捨てると、近くにいたルナの頭に当たった。
「………、なんだ?ルナ…いたのか」
「三ツ谷くん…」
「カノ?」
振り向いた三ツ谷は髭が生えており、その目は生気を無くしていた。そんな三ツ谷を見るのは初めてだったカノトは衝撃を受ける。
「お久しぶりです、三ツ谷くん。その様子だともう何日も不規則な生活を送ってますね?カップ麺だけじゃ栄養バランスが偏りますよ」
「…そんな話をするためにわざわざ来たのか?」
「いいえ、話は別にあります。でもまずはご飯を食べましょう。そんなに痩せてちゃ妹さん達も心配します」
「…あんま腹減ってねぇんだ。それに飯食う時間さえ惜しい。早くコレ完成させねぇと…」
そう言って再び作業に戻る三ツ谷。あの頃のような頼り甲斐のあった背中は、今はどこか寂しそうに見えた。
「ルナちゃん、ご飯作ろう」
「うん…」
元気のないルナと共に台所に行き、許可を得て冷蔵庫を開ける。
「さて…何作ろうか?」
「お兄ちゃんの好きなパンケーキ作りたい」
「パンケーキか。それなら甘くない"おかずパンケーキ"にしよう」
「おかずパンケーキ?」
「目玉焼きとかベーコンとか乗せたやつだよ」
「美味しそう!」
「早速取り掛かろう。ルナちゃん、今から言う材料を用意してくれる?」
「わかった!」
ホットケーキミックスがあった為、それを使ってパンケーキを作ることにした。
ルナにも手伝ってもらい、出来上がったパンケーキの上に目玉焼きと焼いたベーコンを乗せてマヨネーズを掛け、プチトマトとレタスを添えて【ベーコンエッグパンケーキ】が完成した。
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